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「私のスペイン語」
 あれはどんな時だったろうかと考えても出てこない処をみると、相当幼い頃であったのは間違いない。近所の女の子が履いていたポックリが欲しくて母に買ってくれとせがんだ記憶がある。ポックリと言うのは花魁が履くような形の高下駄で、赤く塗られていた。どうして欲しかったのか記憶にない。兎に角欲しくて仕方がなかったのである。娘達に初めて「下駄」を履かせたとき何故か思い出した。「ポックリ」は幼児記憶の抽斗に入っている。

  つい最近まで近所の八百屋魚屋では買った品物を新聞紙で包んだり、紙袋にいれてくれた。袋の材料は広告紙であったり雑誌であったりした。多分、お店の人、特におかみさんが前の晩に夜なべ仕事で作ったものだろう。

  あれはどんな時だったろうかと考えても出てこない処をみると、相当幼い頃であったのは間違いない。「あかいくつ、はーいてた、おんなのこ・・・」の歌詞が書いてある紙袋が戸だなにあり、それを見ながら歌ったのを覚えている。袋の中味の記憶はない。また、「いじんさんにつれられて、いーちゃった」のいじんさんの鼻がとんがっていたのはその時の記憶だろうか自信がない。あの頃はせいぜい2−3回も見れば歌詞は覚えられた。そして、今だに忘れていない。

  私の「赤い靴」は「ポックリ」と同じ幼児記憶の抽斗に入っている。

  コスタリカに住むようになって1年。国語であるスペイン語を習っている。六十の手習いそのものである。三ヶ月すぎたところで先生から童話の本をお借りした。字引を引きながらどうにか意味は取れたので読むことにした。頭の中ではスラスラ読めるが声をだすと途端につっかえる。何回も何回もくり返して朗読する。どうにか読めるようになったので、暗誦しようと本を伏せる。本を伏せると頭の中の本も伏せられてしまう。ちっとも字が出て来ない。

  「あかいくつ・・・」の時とは大違いである。そして、今だに覚えられない。

  私の「スペイン語」は何時になったら「童話」と同じ様に、何処かの抽斗に入るのだろうか。

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