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第9話 運転免許が欲しい その3
 「Manual del conductor マヌアル デル コンドゥクトール(運転手の手引き)」と書かれた、B5版サイズの、まさしく初心者を表わしているような色の黄色い表紙のテキストを持ち帰り、辞書とノートとペンを用意、「さー、やるしかない」と机に向かって1ページ目をめくった私は、まずそこから挫折しました。1段落毎何個もの単語の意味を調べなくてはいけなくて、そればかりか、「あー、さっきこの単語は辞書を引いたじゃないの!」と、自分に腹が立つことが何回あったでしょう。また、同じ意味の言葉は繰り返しを避ける美学なのか、他の単語が使われ、「言い換えるなー!これは文学書じゃないのだから、単純にしてよ!」などと、覚えの悪い自分の無力さを棚に上げ、テキストに八つ当たりすることしきり。

  何しろ、日本語とも英語とも言い方が全く違う言葉ばかり。例えば、車道=カルサダ、路肩=エスパルドン、ハンドル=ボランテ、ブレーキ=フレノ、名詞だけでもこのように違うし、動詞も入れたら書ききれない。小さいど118ページもあるテキストを、全ページにわたって1行毎目を通し、わからない単語をチェックして辞書を引く作業。そのたんびに腹が立ったり、情けなくなったりするばかりで、全体の意味を把握し理解し覚えてテストに備えるというところ までいかず、あっという間に一週間が経ち、テスト前日となりました。聞いてわからなくても、一応、事前の説明は受けておかなくてはと、また、Paso Anchoに行きました。試験担当者が来て、「何か質問は?」に対して、出てくる、出てくる。皆、勉強して来ているのか、私には彼らの質問は聞き取りにくく、はっきり何について話しているのかもわからなく、その上、担当者の説明も声がこもっていて、わずか聞き取れる単語だけが、頭の中でグルグル回っている状態でした。行く所行く所いつもこんな状態で、進歩のない私。最後に、当日の注意事項の説明があり、ボールペンがどうのこうの、鉛筆がどうのこうの。身分証明書と受験申込書を持参することなど、たった、30分程の説明でしたが、他の人たちの熱心な質問を聞いて、自分は何もわかっていないことを思い知らされたようで、ものすごく疲れ、焦りを感じたのは言うまでもありません。何だか、この試験は私にとって免許取得というより、スペイン語の能力テストを受けるような観を呈してきました。

  「一回で受からなくてもいいのだから」と、主人に慰められ励まされて受けた一回目のテストは、案の定不合格でした。7割は4択問題で、残りは下線の空白に単語を自分で入れるもの。「こんな内容テキストにあったかしら?」と思うのは、辞書を引くばかりで内容を理解できていなかったのだから当然の結果です。合否は試験終了後、名前を呼ばれて、テスト用紙右上の角に書いてある点数のみ、もったいぶってチラッと見せてくれるので、どこを間違えどれがあっていたのかが確かめられず、合格した人が抱き合って喜んでいる姿を羨ましく横目でながめながら、肩を落として帰宅しました。

つづく

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