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第22話 Papel de mantequilla(パペル デ マンテキジャ)――バター紙?
 運転免許を取るまでの4年間、私の足はタクシーとバスだった。コスタリカのタクシーはメーターがちゃんと付いていて、旅行で行ったことのあるメキシコのように、乗る前に料金を交渉する必要がなく、時間帯と場所さえ気を付ければ安心して乗れる。もちろん、4年間という長い間乗っていれば、嫌な思いをした経験も少なからずある。メーターに細工をしていたのか、明らかに高く請求されたことや、気付かなかった私も悪いのだが、メーターの電源を入れずに降りる時になって、メーターをオンにしていないことで高く請求されたこともあった。

 でも、乗った回数からすれば、嫌な思いより、気持ちよく目的地まで連れて行ってもらった方が多いと思う。運転手さんと楽しく会話できた時も、いい一時を過ごせたな、と思える瞬間だ。かなりの回数を乗ったからか、家まで来たら、「ああ、あなたをこの家まで前に乗せたことあるよ。」なんてことも。

 セントロ(中心街)で渋滞し、車があまり動かなくてボーとしている私に、「バッグは窓側に置かず、座席の中央に動かして。窓を開けていると、手を入れてきて取られるよ」と、注意してくれた。 片言ではあるが喋れるようになった私に、「あなた、スペイン語良くわかるんだね。さっき、スペイン語が全然わからないアメリカ人が乗って、英語で言われ、こんなこと紙に書いて渡されたけど、何処に行きたいのか私にはさっぱりわからなかった。」と、見せてくれた紙には、線路らしき絵と「NEXT」と書いてあった。多分そのアメリカ人は「次」というスペイン語も言えずに、身振り手振りで行き先を指示したのだろう。その後どうしたのか、当時の私にはまだ聞きだす能力がなかった。

 信号や渋滞で止まるわずかな時間も無駄にせず、プリントを見ている運転手さん。「勉強しているの?」「はい、僕、コスタリカ大学で生物学を専攻しているんです。これは地学だけれど、テストがあるので。」「今日は仕事なの?」「はい、本当は今授業中だけれど、働かなくてはいけなくて。」苦学生の彼、なかなかのハンサムだった・・・という記憶は私の贔屓目かしら。

 この間久しぶりに、友人3人とセントロからタクシーを拾って帰った時。コスタリカのタクシー運転手は結構運転が荒いが、この時の運転手は他のタクシー運転手からも怒られるほどの危ない運転で、助手席に座っていた私は怖い思いをした。誰もがわかる場所を行き先として言ったのに、その場所も知らない。こんな運転手は初めてだ。友人が次々と降り、最後に残った私に彼は話し掛けてきた。「日本人ですか?」「ええ、あなたは?」「コロンビアから来ました。」「長いの?」「4ヶ月前に来ました」なるほど、4ヶ月じゃ道を知らないはずだ。そういえば最近の新聞に、「コロンビアの政情が悪く、コスタリカへの移住者が増えた」という記事があったことを思い出し、「家族と?」「ええ、あなた達が乗る前に降りたのが妻です。」 我が家までは距離が短く、それ以上話すことができなかった。もっと、話してみたかったな。でも、コロンビア人は運転が荒いのか、彼が下手なのか、来て間もないのにタクシー運転手として家族のために働く彼に「気を付けて、そして、頑張ってね」心の中でエールを送った。でも、ちょっと怖かったな。

 安全なタクシーに乗って、運転手と軽いお話をするのもまた楽しい。

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